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PIKANDA SEASON 2

2009.10.26 積丹岳遭難訴訟を考える

札幌テレビニュースより転載
積丹岳で、ことし1月、スノーボードをしていて遭難した札幌市のFさんが、道警の救助活動中に滑落して、死亡した事故を巡る裁判です。裁判では、Fさんの両親が、道警が適切な救助活動を怠ったことが事故の原因として、道警側におよそ8600万円の損害賠償を求めています。
きょうの裁判で、Fさんの母親は、法廷で「救助隊の行動はプロとは言えず、優秀な救助隊に改善されることを望む」と訴えました。これに対して、道警側は、訴えを退けることを求めました。



当時の北海道新聞の記事
志管内積丹町の積丹岳(一、二五五メートル)に一月三十一日に入山した男性が行方不明になった遭難事故で、道警は二日午前七時から捜索を再開し、道警ヘリが約四十分後に男性を発見し、札幌市内の病院に搬送したが、男性の死亡が確認された。また、男性は一日の救助作業中に二度滑落していたことも分かった。機動隊員が急斜面を滑落した男性を、救助用ソリに乗せて引き上げていた際、ソリを固定した樹木が重みで折れてソリが滑り落ちたという。
道警によると、男性は札幌市豊平区Fさん(38)。二日の朝の捜索で、Fさんは標高千メートルの南側斜面で、ソリに乗った状態で見つかった。一日の捜索で道警機動隊員五人は、同日正午、山頂付近にFさんが倒れているのを発見。隊員がFさんを抱きかかえて移動したが、足元の雪が崩れ、隊員三人とともに約二百メートル滑落した。滑落後の同午後一時ごろ、隊員はFさんをソリに収容。三人で約一時間かけ、四〇度の急斜面を五十メートル引き上げた。 その後、他の隊員と交代するため、一時、ソリを樹木にくくりつけた際、樹木が折れ、Fさんが二度目の滑落をして行方不明となった。このため、隊員は一日夕に捜索を一時、中断した。
滑落については当初、Fさんが雪に穴を掘ってビバークしており、そこからの救助作業中に発生したとみられていたが、道警の隊員への聞き取りで、二度の滑落など詳細な状況が判明した。



HBCニュースの記事を全文転載
「積丹岳で何が 救助中に滑落 」
遭難した男性の救助活動、猛吹雪の雪山で何が起きていたのでしょうか。
後志の積丹岳で、警察が遭難した男性を救助中、男性の乗ったそりが斜面を滑り落ち、男性は遺体で見つかりました。
標高1255メートル、後志の積丹岳。
遭難事故は、この山で起きました。
亡くなったのは札幌・豊平区の会社員Fさん。
Fさんが友人ふたりと積丹岳に徒歩で登ったのは31日。
スキーやスノーボートを楽しむためでした。
そして下山中、1人だけボードで滑っていたFさんは、スキーで降りていた友人たちとはぐれ行方がわからなくなります。
午後3時半ごろのことでした。
Fさんは翌日、朝7時半ごろ積丹岳の山頂付近にいることをトランシーバーで通報。
正午ごろ機動隊員の5人で編成された救助隊が山頂から東に250メートルの付近にいたFさんを見つけました。
山頂付近には黄色いテントやボードが残されていました。
6人は、前に機動隊員が2人。
Fさん抱えて両脇に2人。
さらに、後ろに1人の形で下山を始めましたがわずか10分後、Fさんと隊員3人が斜面に張り出した雪を踏み抜いて積丹岳の南斜面を滑り落ちました。
滑り落ちた4人は傾斜40度の切り立った崖にFさんを一番下にして、高さ200メートルの間に散らばるように止まりました。
その後、最も下まで滑り落ちた隊員と、難を免れた2人の隊員がFさんの場所までたどり着き、意識朦朧となったFさんを救助用のそりに収容。
当時、付近は視界5メートルの猛吹雪だったといいます。
吹雪の中、3人の機動隊員はFさんをおよそ1時間をかけて50メートル上まで引っ張り上げます。
しかし、自らも滑落しながら救助にあたっていた隊員の疲労が激しく隊員の交代を決断。
Fさんを乗せたそりを近くの直径5センチの「ハイ松」にくくりつけたところこの木が折れ、ソリは斜面を滑り落ちてしまいました。
けさ、再び発見されたFさんはそりに乗せられたまま最初の滑落場所から600メートルの下で見つかり死亡が確認されました。
今回の遭難について道警の幹部は「ギリギリの状態で活動し、最善を尽くした結果だった」と話しています。




第三者が客観的に考えることが出来るように3本の記事を全文引用しました。



一般的には冬山の遭難なんて、厳しい自然環境に頼まれもしないのに勝手に入っていった人が起こすわけだから、結果がどうであれ「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」と言って終わるのが普通だと思います。ご両親は、危険な冬山に勝手に入っていった我が息子に責任は全く無いと考えているのでしょうか?

道警の救助の手順には確かに至らない点があったし、結局は助けることが出来なかったわけだけれど、実際に救助に関わらなかった者がそれを非難することは妥当ではないでしょう。そもそも、この事故の責任は救助ではなく息子さん本人とそして一緒に入山した仲間2人にあります。こんな訴状を認めていたら今後の日本の山岳救助活動は萎縮してしまう可能性があります。

「出動したからにはプロとしての仕事をしなかった救助隊が悪い」という原告の主張を肯定する意見も確かにあります。
しかしそういう意見を言う人も、一方では、「自分たちの実力では,この天気では無理ですと言って,最初から出動しなければよかったのだし、その結果として遭難者が亡くなってしまってもそれは仕方がないことなのだ。」ということも言っています。

「山岳救助隊」と名乗っているならば、出動しなかったらそれはそれで「不作為」として訴えられてしまうかも知れないし、事は簡単ではありませんね。

それにしても、そもそも北海道警は本当に山岳救助の「プロ」たるべきなのでしょうか?長野,富山,岐阜県警のように北アルプスという特定の地域で歴史を持って活動しているところと同じように考えるのは無理があるような気がします。もっと突っ込んで言えば、犯罪捜査をすべき警察組織がレスキューのプロというのもどうなんでしょう。別におまわりさんが非番でもないのに、ザイルをかついだり、山靴を履いたり、ピッケルをもったり、そういうことをしなくたっていいんじゃないかとも思います。世界的にみて,警察組織が山岳レスキューをするのが一般的なわけではないですから。

とにかく、この訴訟によって一体何がどう変わるのか、道警は何かを変えたのか、注目したいと思います。

自分も積丹岳を訪れてみました(2010/3/22)




その後、3年もかかってようやく判決が出たようです。

北海道新聞 2012/11/19 そのまま転載するのもあれなので、画像でスクラップ風に保存しました。賠償額はかなり減額されていますが、道警の過失を認めたようです。今は判決文の詳細が知りたいところですね。
doshin.jpg


その後、道警は高裁へ控訴。2013/3/14札幌高裁で第一回控訴審が始まりました。

2015/03/26 音沙汰が無いなあと思っていたところ、本日控訴審判決が出たとの報道です。
20150326積丹岳控訴審判決

中途半端に冬山遭難者の救助になんか行かなければよかったのだ、ということなのでしょう。
まあなんとも虚しいですね。(20150326追記)

道が上告しました。どうにもこうにもな裁判ですがまだ続くようです。判決がでるのは何年後?
(20150402追記)
20150402上告
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