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PIKANDA PART2

2011.7.27 カムイミンタラを行く(6) 白雲岳避難小屋~北海岳~旭岳~旭岳温泉(完)

7月27日、入山5日目の朝は2時半に目が覚めました。
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テントサイトが雪渓から近いからなのか、夜はこれまでになく寒くあまり熟睡出来ませんでした。ここまでで一番結露のひどい朝でした。

天気次第では裏旭でもう1泊と思っていましたが、昨日の予報ではこの先もう好天は望めないということらしいので、今日中に山を下りることにします。

山中で最後となる朝食をとり、午前4時50分白雲岳避難小屋を後にします。昨日歩いてきた高根ヶ原、忠別岳、はるかに霞むトムラウシなどに背を向けて歩き出しました。
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白雲岳の分岐をまっすぐ北海岳に進みます。
「雪の沢」
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「花の沢」
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北海平をゆるやかに登る。
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2グループとすれ違って一登りで北海岳山頂に立つとようやくお鉢平が望めました。源頭とは言ってもこちらは火山性地形。有毒ガスが底に溜まっているはずです。残念ながら三川台付近の景色を見てしまった後では、もうどこを見ても感動は得られなくなってしまっていて、まるで消化試合のようにのろのろとお鉢のヘリを進むのでした。
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やがて間宮岳の分岐。そして砂礫の道を下ると裏面にべったり雪渓を残した旭岳はもう目の前です。裏旭の幕営指定地は無人でした。
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雪渓と急なザレを登って、旭岳山頂に9時20分に到着。もうガスが上がってきており、四方を見渡しても大して景観は得られませんでした。
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10分ほどザックを枕にして足を伸ばして休みます。展望が無いだけで風も寒さもありません。下り始めるとそこはロープウェイからの日帰りの人が沢山登って来ます。疲れて動かなくなった子供を背負ったお父さんが汗だくになっています。ペットボトル片手の親子もいます。

初めてここを登った時、山頂付近でまるで会社帰りのように革靴と手提げ鞄の人を見て驚いた記憶がありますが、今もあまり変わっていないようです。
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雲がなかったら絶景のはずなのですがこの日は全くダメでした。
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7合目で一度休憩したあとは、シューシューという地獄谷の噴気の音を聞きながら、姿見までテンポ良く下りていきます。

やがて観光客で賑わう姿見の池の展望所に到着。担いでいる大きなザックをまじまじと見られて「縦走?」と話しかけられました。
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10分ほど楽しくお話などしてから、ロープウェイ駅まで両側に白い花が咲き乱れる、文字通りの「花道」を行きます。
午前11時30分にロープウェイ姿見駅にゴール。十勝岳温泉から入山して、ちょうど96時間でした。




5日目 歩行距離 11.0km (累積66.5km) 休憩を含む行動時間 6時間40分 使った水(食事用を含む)約1200ml 給水0ml


荒々しい火山と美しい花のコントラストが見事な十勝連山、
ナキウサギの石垣山、オプタテシケ山からコスマヌプリの間の山深さ、
三川台付近の源頭に残された原始の森、黄金が原の草原とエゾイチゲのお花畑、
トムラウシの巨岩と湖沼群、ヒグマの闊歩する忠別から高根ヶ原に至る広大な平原・・・
そしてまた火山の旭岳。

歩き通した66kmの間に見たものは、すばらしく変化に富んだ、原始からの自然の姿でした。
日常に戻った今も、目に焼き付けてきたあの大自然がいつまでも失われることのないようにと願わずにはいられないのでした。


(完)


7/23十勝岳温泉~カミホロ避難小屋
7/24カミホロ避難小屋~美瑛富士避難小屋分岐
7/24美瑛富士避難小屋分岐~双子池手前ビバーク地
7/25双子池手前ビバーク地~トムラウシ南沼
7/26トムラウシ南沼~白雲岳避難小屋
7/27白雲岳避難小屋~旭岳温泉
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2011.7.26 カムイミンタラを行く(5) 南沼幕営指定地~忠別岳~白雲岳避難小屋

7月26日朝、3時半に目覚める。テントの入り口を開けるとガスが立ちこめていてトムラウシ山頂周辺は見通せません。それでも3人の幕営者がご来光を見るために出発していきました。

昨日のうちに登っておいたのは正解だったかな、と思いながらコーヒーを飲み干して出発の準備にとりかかります。

入山してから4日目に入り山の生活にも慣れてリズムが出てきました。午前5時に出発。


北沼への巻き道を辿ると、朝霧の中に雪解け水をたたえた池塘とその周囲のお花畑がいい雰囲気です。ゆっくりと時間をかけて分岐まで歩きます。
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北沼から先の縦走路はこの時間はまだ誰もいません。独り占めのロックガーデンへ向かいます。振り返る北沼の分岐付近は一昨年の大量遭難事故のビバーク地点となりました。
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ロックガーデンです。それにしてもどうやったらこんな石ころだらけの山ができるのだろう、と不思議になります。
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暴風雨の中、ここを登ってくるのはかなりしんどいだあろうなあ、と事故時の状況をイメージ。
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その後もしばらくは歩きにくい巨岩の道が続きます。ヒサゴ沼泊まりの登山者とすれ違うようになってきました。
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日本庭園と呼ばれるところはあまり印象には残りませんでした。日の光が水面に反射してキラキラと輝いていた美しい天沼を過ぎるとやがて木道が現れ、景観としては急に俗っぽくなってしまいました。しかし、ずっと山道を歩いてきてかなり疲れが溜まってきているので、木道はありがたかったです・・・。
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ヒサゴ沼を右手に見ながら化雲岳への登りをこなし、丘の上の分岐を過ぎます。
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化雲岳の分岐が近付くと再びメンタルが下がりましたが、ここが天人峡へのエスケープルートへの入り口だからでしょう。

一番歩いてみたかった美瑛富士からトムラウシまでの区間は終わったし、もうこれ以上はいいかな、とエスケープしたくなっていたのでした。

けれど初志貫徹と思い直して予定の縦走路を進みます。すぐに五色岳へ向かう気持ちのいい木道に入ります。
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途中の雪渓で今日も2500mlの給水。振り返るとトムラウシ。
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午前10時45分、藪道を抜けると五色岳山頂。遠かった旭岳が近付いてきました。右手雪渓のところ、忠別岳とのコルから下に入ると忠別岳避難小屋です。
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今日の行動を終わりにして幕営するにはまだ少し早い感じです。しかし次の白雲岳避難小屋まではまだ12kmほどあり5~6時間もかかりそう。この忠別岳避難小屋は何とも中途半端な位置にあるのでした。


明日の天気が崩れそうだったこと、ヒグマの気配の濃い忠別岳では幕営したくなかったこと、そんな理由で結局白雲岳避難小屋まで頑張って歩くことにしました。

忠別岳への登りでふと先を見ると、6-700mほど先の登山道が尾根を超えるところに大きな木が見えます。不自然なほど大きな木で、まさかヒグマではなかろうなともう一度見ると、なんと、さっきまでそこにあった木が尾根をスッスッと登っていくのが見えます。
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本当にヒグマでした。距離があるので大声で「ホーホー」と叫ぶと、こちらに気づいてくるりと背を向け尾根の向こうに姿を消してくれました。



その後も声を出しながら歩き忠別岳山頂に午後1時。横浜からのご夫婦と言葉を交わして、高根ヶ原へと向かいます。天気が良すぎて大気が不安定になってきたようです。遠くで雷も鳴り始めました。
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忠別沼も綺麗です。
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平ヶ岳へとゆるやかに続く坂道を下りていきます。
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かなりの距離を歩いてようやく高根ヶ原の入り口。
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まだまだ歩きます。途中で一度、ブチ切れて重いザックを投げ捨てて15分ほど昼寝です。
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17時半、長い長い一日の終わりにようやく白雲岳避難小屋に到着。小屋泊まりの登山者も多数で、テントは6張りでした。
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食事をして水を作るとあっという間に夕闇が迫ってきます。山中5泊の予定だったけれど、この調子なら今夜を最後として4泊で抜けられそう。天気が心配だったので、明日には下山する気になっていました。



4日目 歩行距離 21.4km (累積55.5km) 休憩を含む行動時間 12時間30分 使った水(食事用を含む)約3500ml 給水3000ml (白雲岳避難小屋手前の雪渓融雪水)

(つづく)



次は7/27 白雲岳避難小屋~旭岳温泉
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2011.7.25 カムイミンタラを行く(4) 双子池手前ビバーク地点~三川台~トムラウシ山~南沼幕営指定地

7月25日朝、明るくなってみると周囲は霧が立ちこめています。
お腹はそれほどすいていないけれど、途中でバテてしまうのも困るので食べることにします。

サバの味噌煮の封を開けかけたけれど、ちょっと考えて止めておきました。
ルートを取り戻した気楽さからか、昨夜はヒグマに気を払うこともなく熟睡できました。

5時少し前に出発。今日はトムラウシの南沼が目的地です。これから歩く区間が今回の山旅のハイライトでしょうか。

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下山路は雪渓が多く残りところどころ不明瞭ですが、昨日のようにわからなくなると言うこともありません。途中で雪渓からの水を2500ml補給。


双子池が近くなり、背丈以上ある藪道を歩きます。そこに居るかもしれない相手にこちらの存在を知らせるために、「ホーホー」とか「ホッホッホー」とか声を出しながら行きます。この日のために新しく買ったホイッスルも使ってみたけれど、かえって疲れるのでやめてしました。。
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午前5時40分、双子池幕営指定地を通過。昨晩ここに誰かが居た気配はないようです。それにしても四方を藪に囲まれたこの幕営指定地は陰鬱でちょっと怖いです。かえって昨日のビバーク地から無理に下りてこなくてよかったと思ったくらいでした。
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6:12 1569ピーク
7:04 1668ピーク
7:37 1615コスマヌプリの肩
8:16 1591ピークの巻き道

朝の縦走路を順調にアップダウンして行きます。ガスで展望は得られないけれど、かえって気温が上がらなくて歩きやすく感じます。

途中で振り返ると、一晩過ごしたオプタテシケ山が一瞬ガスの晴れ間から見送ってくれていました。
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ガスがとれ始めると、右手眼下には東トノカリ沢の源頭が広がります。手つかずの原生林と蛇行する沢、島状に残る残雪と緑あふれる草原が織りなす原始の姿に感動しました。ここで今日最初で最後、2人組の縦走者とすれ違いました。
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8:52 1558ピーク
9:48 1678ツリガネ山の肩
10:34 1507コル

ツリガネ山を越えて急な鎖場を下り、幕営跡のあるコルに立って三川台を前方に見上げると、いよいよトムラウシの山域に入ってきたと思えます。


振り返ってみてもツリガネ山の向こうはガスで、十勝連峰を歩き通した達成感を感じることはできませんでした。
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急坂を登り切って正午、ついに三川台に達しました。眼下に望まれるユウトムラウシ川の源頭は、先ほどの東トノカリ沢の源頭に輪をかけて美しいです。ここまで来ることが出来たことに感謝しないわけにはいかない気がしました。
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左手は広大な黄金ヶ原の草原。秋には黄金色に輝くといいます。
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その昔アイヌの人たちが感じた「神々が遊ぶ庭」とはまさにこういうところなのだろうなあと思いました。
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三川台からは草原のお花畑の中をトムラウシ山に向かって緩やかに登っていきます。
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残雪に縁取られて青い水をたたえた南沼を過ぎて急坂を登っていきます。
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15時10分、登り切った先が今日の幕営地でした。水源の雪渓からは水が勢いよく噴き出しています。
周囲にはチングルマ、エゾコザクラ、エゾノハクサンイチゲが咲き誇り、まるで別天地の様相でした。
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食事の用意をしながら、すっかり日課になった水の殺菌です。今日は水源地から4000ml取水しマイクロフィルターで漉過してから煮沸。ある程度冷めてからペットボトルに入れるので、ちょっと時間がかかります。

食事は基本的に朝夕2回、アルファ米の鳥おこわや炊き込みご飯、ドライカレーなど。行動中はブドウ糖や固形の高カロリー食品をこまめに口に運んでいました。蛋白もそれなりに必要なので、軽い缶のサンマ、アンチョビーやポーク、レトルトパウチに入ったソーセージやサバ、などを毎食分持って行きましたが、ニオイの出るゴミも二重袋にしていました。

何よりも美味しかったのは1日1杯夜だけ、と思って持って行った「インスタント味噌汁」。毎日大量の発汗で塩分もかなり失われているのでしょう。



食事を終えて17時20分。日没までに1時間以上あるので空身でトムラウシ山頂まで往復しました。
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テントに帰り、明日の行程を考えます。今の問題は明日の幕営地。忠別岳避難小屋ではちょっと近すぎるし、白雲岳まで行くとなると今度は距離が20kmを超えてしまいます。

「まあいいや。歩いてみないとなんとも言えないしね」、とゴロンと寝転んでテントの中からトムラウシ山頂を見上げました。
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今日は幕営者は計6人。ヒグマについては今夜はあまり気にしなくても良さそうでした。




3日目 歩行距離 14.9km (累積34.1km) 休憩を含む行動時間 13時間 使った水(食事用を含む)約3500ml 給水4000ml (南沼幕営指定地の雪渓融雪水)

(つづく)


次は7/26 トムラウシ南沼~白雲岳避難小屋
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2011.7.24 カムイミンタラを行く(3) 美瑛富士避難小屋分岐~オプタテシケ山~双子池手前ビバーク地点

美瑛富士避難小屋へのエスケープルートとトムラウシ縦走路への分岐で悩むこと数分。雨は小雨に変わり、やがてガスだけになりました。

よく考えてみると、オプタテシケまで行ってから引き返すという手もあるし、足の傷も血さえ止まっていれば、どうと言うこともありません。天候がメンタルに与える影響は結構大きいのでした。


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ナキウサギの「チッチッ」という声を聞きながら、石垣山を登ります。もう雨も完全に上がりました。

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2~3グループとすれ違いながら石垣山の山頂を越えると、次は双耳峰のベベツ岳。
ここの雰囲気が何ともいえず素晴らしく、思わず鞍部でザックを放り投げて乾いた石の上にごろんと寝転んで休憩をとります。

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ベベツ山頂へのゆるやかな道でも重装備の縦走者数人とすれ違いました。

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12時10分、ベベツの山頂を過ぎて下りにかかる頃、ようやくオプタテシケ山が眼前に姿を現しました。
この山を越えればキャンプ予定地の双子池、とは言っても300mの登りと600mの下りでそれなりに時間はかかりそう。


今はもう引き返すなんて考えは吹き飛んでいます。双子池までたどり着けなければどこでもいいからビバーク、と割り切ってひたすら歩くことにしました。

実際、オプタテシケ山への登り道にはところどころビバークの痕跡が見られます。美瑛富士避難小屋からトムラウシの南沼までの区間で幕営指定地は双子池だけなのですが、この長い距離を抜けきれずにビバークを強いられることは結構多いでしょう。翌日歩いた双子池から三川台の間にも整地されたスペースが随所に見られ、確信犯的に泊まっている人がいる様にすら思えました。


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14時10分、 崖道を1カ所よじ登り、虫の多いオプタテシケ山頂に到着。
山頂手前で最後にすれ違った軽装の2人は、美瑛富士方面からの日帰りピストンとのことでした。



何とか明るいうちに双子池まで降りられそうな目途が付いたけれど、行動時間はすでに9時間を超えており、さすがに疲れてきました。

山頂部から100mほど下って広くなった登山道脇で本格的に休憩をとることにします。

歩くのをやめると鈴が鳴らないので代わりにラジオをつけておきます。ちょうど夏の甲子園、南北海道大会の決勝戦の大詰めで、アナウンサーの絶叫と観客の大歓声が聞こえてきました。クマよけにはちょうどいいかな、と乾いた草の上に体を横にするとポカポカとしてきていつの間にか寝てしまっていました。
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雨粒が顔に落ちて目が覚めます。はっとして時計を見ると15時40分。決勝戦は終わって静かなクラシックが流れています。あわてて身支度して登山道を下りはじめました。霧で薄暗くなり夕暮れが近付いてきています。急がなければ。


濡れた靴下を履きっぱなしだったので、あっという間に両足にマメを作ってしまっています。痛みをだましだまし沢状にえぐれた登山道を下りていきます。

標高1750m、双子池の幕営指定地まで残りの標高差350mのところで突然道が無くなってしまいました。九十九折りに下ってきて、大きな岩がゴロゴロしているところにつながる場所で、何度見ても自分の立っている岩の先に道がありません。

振り返ると30mほどのところに赤いリボンが木に結ばれていました。そこまで戻って周りを見渡しますが、やはり他には道はありません。また下ってみる・・・道が切れている。これを3度繰り返しました。

GPSと地図を確認すると、そもそもリボンの先からはあるべき地図上の登山道が実際には存在しません。国土地理院の地形図に書かれている登山道が正確でないことは珍しくありませんが、早くルートを見つけないと困ったことになるなあと思った。

ザックを置いて、もう一度だけ下に道を探しにいきます。あちこち見渡して地図とは全く違うところに道がついているのを見つけました。赤いリボンはそれまで地図通りだった登山道が、急に地図と合わなくなる場所をピタリと示していました。そこから下は雪渓が遅くまで残るところなので、測量時に登山道が不明瞭だったのかも知れません。
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このドタバタでまた1時間費やしてしまいました。余裕がある積もりだったのに、いつの間にか時間を気にするようになって登山道を下りていると、雨で濡れた岩で滑って尻もちをつきます。

焦っている自分にふと気付きました。色々な意味で今日はもう止めたほうがよさそう。日没までまだ時間があるけれどテントを張る場所を探すことにします。結局そこから100mほど下った1650m地点で登山道脇に幕営。午後4時30分。


コーヒーを淹れて飲み、シュラフに入ってようやくリラックスしました。

テントはやや傾斜のある場所にしか張れず、横になると転がっていきそうなのを樹木で支えている感じです。下もボコボコだけれど、今夜はもうこれで寝るしかありません。

幸いなことに雨もそれ以上は降らず、霧が取れてくると下に双子池が見えました。
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思ったよりも距離があります。無理して行かなくてよかったかなと思いつつ、横になって目を閉じると一気に眠りに落ちていきました。



2日目 歩行距離 11.6km (累積19.2km) 休憩を含む行動時間 11時間30分 使った水(食事用を含む)約3500ml 給水1500ml (美瑛富士の雪渓融雪水)

(つづく)


次は7/25 双子池手前ビバーク地~トムラウシ南沼
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2011.7.24 カムイミンタラを行く(2) カミホロ避難小屋~十勝岳~美瑛富士避難小屋分岐

7月24日、午前3時半に目が覚めると外は薄明るくなっています。朝食をとってから午前5時少し前にカミホロ小屋前から歩き出しました。
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天気良好。十勝岳への縦走路は少しザレた尾根道で、左手の富良野側は何カ所かすっぱりと切れています。
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小さなピークを2つ超えて十勝川の源頭を右手に最後の登り。
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午前6時ちょうど、2077mの十勝岳山頂に立ちました。少し遅れて望岳台のほうから早立ちの日帰り登山者が登ってきました。

東、十勝川源流。
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西、望岳台方面。噴火口から噴煙。
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南、カミホロカメットク山。雪渓のあたりがカミホロ避難小屋。
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そして進行方向の北。右奥に猫耳のトムラウシ、左奥がゴールの旭岳。
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砂礫の台地を辿り美瑛岳へと向かいます。ここまでは非常に気分爽快でした。
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2時間ほど歩くと、午前8時半に美瑛岳分岐下に到着です。眼前には美瑛富士と石垣山。少しガスが出てきました。
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美瑛岳山頂では多くの人が景色を眺めていますがこのピークも省略して先へと進みます。

鞍部まで300mの下り。残りわずかというところで不用意に出した左足で大きな浮き石を踏んでしまいました。バランスを崩してスネから岩に崩れ落ちて、思わずうめいてしまいます。

痛みが引いてから歩けることを確認して安堵したのもつかの間、ズボンのスネのところにみるみる血が滲んできました。裾をめくって見ると、100円玉くらいの大きさで丸く皮膚が裂けて血が湧きだしています。とりあえずウエットティッシュを当ててタイツで圧迫固定すると、なんとか止血できた様子。

美瑛富士との鞍部に降りて、トボトボと藪道を歩いて行きます。「単独なのだからことさら注意しなければいけなかったのに・・・」と気落ちしていると、いつの間にか天気も変わり雨粒が落ちてきました。雪渓を渡るところで雨具を着け、融雪水を1.5L汲みます。
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石垣山にナキウサギの写真を撮りに行くと言って追い抜いていった地元の人も、「この雨ではだめだー」と言いながら雪渓を渡って引き返してきました。
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美瑛富士避難小屋分岐までの道では藪から雨露が靴を濡らしやがて水が中にまで侵入・・・。メンタルが急に下がってくるのを感じつつ分岐に到着。
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この先、右に行けばもうエスケープルートはありません。近づいてきている台風の直撃はなさそうだけれど、恐らく一番影響を受けるのは今夜でしょう。予定通りトムラウシ縦走路に踏み出すのを躊躇するほどにメンタルが落ちてしまっていました。


午前10時35分、弱まってきた雨の分岐で、「どうしようか」としばし立ち尽くすのでした。


(つづく)



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2011.7.23 カムイミンタラを行く(1) 十勝岳温泉~カミホロ避難小屋

7月23日、苫小牧から3時間半ほど走り、満車状態の十勝岳温泉駐車場でどうにか駐車スペースを確保です。入山届けに記入して午前11時30分、標高1280mの登山口から歩き始めました。

左手に三段山の切り立った岩肌を眺めながら深くえぐれた安政火口手前の涸れた沢を渡り、富良野岳へと緩やかに登っていきます。時間も時間なので、日帰りの登山者と沢山すれ違います。
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今日はカミホロ避難小屋前で幕営の予定。時間もあるので、富良野岳と三峰山の鞍部に上がってそこから縦走を始めることにします。途中、お花摘みのご婦人のためにストップさせられること2回。
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色々な意味で花の名山なのだなあと妙に納得です。
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稜線に上がると右手に富良野岳山頂。山頂周辺にもきれいな花畑がありそう。
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しかし今日は体力温存を最優先。富良野岳の登頂はあっさり捨てて左手の三峰山への登りにかかります。
登りに喘ぎながらふと目を向けると、遠く知床の山々が雲海の向こうに見えました。
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給水が非常に困難な十勝連峰の縦走初日、ザックには水分だけで6リットル以上入っているうえに、良いお天気とあって、稜線に上がるまでにかなり消耗しています。
旭岳までの行程は約70kmと、とにかく長いので、いちいちピークを拾っていたりしたら途中でギブアップになりそうな気がしていました。

三峰山山頂にたどり着くと、十勝岳の威容とその前衛にカミホロカメットク。
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上富良野岳のゆるやかな丸いピークを通過。登ってきた谷を眼下に北上します。
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カミホロカメットクのピークも捨てて、迷わずお花の綺麗な巻き道へ。
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尾根を超えると草原の中にカミホロ避難小屋が姿を現しました。
雪渓は沢山残っていて、水はそれほど担いで来なくても大丈夫だった様子。今年は大雪山も雪が多かったようです。
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16時20分、標高1830mのカミホロ避難小屋に到着。小屋泊まりの6~7人の若者グループは元気一杯。テント場には誰もいないけれど早速張らせてもらいました。

後から旭川からというご夫婦がやってきて隣に張って、この夜のここでのテント泊は我々3人ということになりました。

富良野盆地の上に綺麗な夕日と雲海。
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反対側には影十勝が出現。
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標高2000mのテント場は風は弱いものの寒く、早々にシュラフに潜り込みます。明日は双子池まで歩かなくてはいけないし長い1日になりそう。午後9時ころ、真っ暗くなってからテントから顔を出すと天の川が頭上に浮かんでいました。
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歩行距離7.6km、 休憩を含む行動時間4時間50分、 使った水(食事用含む)約2000ml、 融雪水の給水 0ml
(つづく)


次は7/24 カミホロ避難小屋~美瑛富士避難小屋分岐
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2011.7.28 下山報告

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昨日の昼に旭岳温泉に下山しました。
十勝岳温泉に車をデポして入山してから山中4泊の長旅となりました。

十勝連峰、トムラウシ、表大雪までの約70kmを歩くロングトレイル。
もともと5泊の予定でしたが、天候の悪化の懸念があり、途中を頑張って1日早く下山したわけです。

大雪山系、なかでも十勝連峰北端のオプタテシケとトムラウシの間は、少なくとも山中2泊の幕営が必要な山域で、それだけに自然度が極めて高いことで知られています。

そんなところに、静かに分け入ってみよう、と思ったのでした。
実際にたどり着いてみると、その素晴らしさには圧倒されました。まさに「神々の遊ぶ庭」です。

道中、ルートロスによるビバーク、ヒグマの目撃(遠目ですが)などありましたが、無事に帰還しました。
ちょこちょこと、記録を書こうと思います。

7月28日朝、十勝岳温泉にて。(写真は7月24日の十勝岳山頂)


7/23十勝岳温泉~カミホロ避難小屋
7/24カミホロ避難小屋~美瑛富士避難小屋分岐
7/24美瑛富士避難小屋分岐~双子池手前ビバーク地
7/25双子池手前ビバーク地~トムラウシ南沼
7/26トムラウシ南沼~白雲岳避難小屋
7/27白雲岳避難小屋~旭岳温泉
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2011.7.22 出港

明日から夏休みです。

夕方、仕事を早めに切り上げさせてもらって、16時過ぎに仙台から高速に入って八戸まで走ってきました。
震災でダメージを受けた八戸港フェリー埠頭の機能も回復し、今月中旬からシルバーフェリーの運航が再開されています。

本州から北海道へ渡る夏休みの家族連れや中高年グループなど満員の乗客を乗せて、先ほど22時過ぎに出港しました。キャンセル待ちで2等寝台を手に入れてなんとかベッドで寝ていけることになりました。
明日7時に苫小牧上陸です。

思えば家庭を持ってから苦節15年にして初めて手にした完全に自由な1週間。1人でワクワクしています。
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