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PIKANDA PART2

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縦走余話(6) 北の山人

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↑双子池からコスマヌプリへの道。


もう1ヵ月も前になってしまった縦走の話も今回で最後にしようと思うけれど、下山後にお世話になった方へのお礼を是非書いておきたいと思う。

4泊5日のロングトレイルで、途中雨にも降られて両足はつぶれたマメだらけ、爪も3枚はがれてしまっていた。靴下も含めて下着は1度替えたきりで相当に汚い状態での下山となった。毎日テントに入ってウエットティッシュで全身を拭いてはいたものの、日数分の下着を持って行ったわけでもなく、交換は一度きりでお世辞にも衛生的とは言えない状態。

ただし、素材の防臭効果が優れているからなのか、鼻が慣れてしまっているからなのか、自分で気付くような臭いは全くしなかった。

正午に旭岳温泉に下山して、ロープウェイの駅からしばらく歩いて下っていくと、なんだか敷居の高そうな高級な宿が多い。あるホテルでは日帰り入浴は14時からとのことで、バスの時間がちょうど14時だったために待つことは出来なかった。

その向かいのロッジ風の宿「ヌタプカウシペ」の扉をたたき日帰り入浴をお願いすると、半ズボン姿のご主人が出てきて、「まだお湯を入れ替えたばかりで湯船にたまりきってないけれどいいよ!」と快く入れてくれたのだった。

濡れて乾いた後の靴と足の臭いはさすがに強烈なのが自分でもわかる。上がり間口でまたウエットティッシュで足を丁寧に拭いてから料金500円を支払って、その日の一番風呂をありがたく使わせていただいたのだった。


風呂上がりにビールを買って飲みながら、バスの時間までゆっくり過ごさせてもらう。

宿のご主人に十勝から縦走してきたというと、双子池のテント場のゴミの量を聞かれた。あの奥深い双子池のキャンプ指定地では、時々地元の人がヘリコプターでゴミの回収を行っていて、その案内役として同行することもあるのだと言う。トイレの問題もそうだけれど、我々の見えないところで山を守っている地元の方々の努力には頭が下がる思いがする。


丁重にお礼を言ってロッジ・ヌタプカウシペを後にしたが、さすがに風呂でも浴びないとバスに乗るのは犯罪的かな、と思っていたのでとても助かったのだった。

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↑ヌタプカウシペ。お世話になりました。


十勝岳温泉の入山口に置いてある車を回収してからの泊まり先はまだ決めていなかった。いつもの白銀荘にしようかとも思ったけれど、相部屋の白銀荘では、消灯時間後は記録を付けることもままならなくなってしまうので、他の十勝岳温泉の宿で部屋を探すことにした。

JRの駅から十勝岳温泉の凌雲閣に電話をして、部屋の空きを聞いてみる。
15時を回っていたにも関わらず、快く割引料金で宿泊を受け入れてくれた。

ここのご主人もかつて地元の山岳会に所属していたという山の人で、足を引きずる自分を見てひどく気に掛けてくれて、「よかったでしょう。いい経験をなさいましたね。」と親切に食事の世話などをしてくれるのだった。


翌朝また、さらに料金を割り引いて頂いて丁重にお礼を言って宿を後にしたのだが、ますます上富良野への移住を本気で考えてしまうのであった。

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↑富良野岳への登山道から見下ろす凌雲閣と上富良野。



この広い大雪山系を取り巻くように点在する温泉地。

旭岳温泉でも十勝岳温泉でも、層雲峡でもトムラウシ温泉でも、みんなが大雪山全体のことを大事にしているのがひしひしと感じられる。この山が好きで、山とともに生きている優しい人たちであった。


お世話になりました。ありがとうございました。


旭岳温泉 ヌタプカウシペ ご主人とおかみさん
十勝岳温泉 凌雲閣 ご主人とおかみさん
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縦走余話(5) 星撮り

P社のカメラを使っているというと大抵、なんでそんなマイナーなメーカー?という顔をされるのだけれど、なかなかこれがいいカメラで気に入って使っている。

一眼にしてはコンパクトでなおかつ悪天候、低温、耐久性に優れている。これまでに2度の落下で地面にたたきつけてしまっているのだが全く問題無く動作しているし、氷点下10度での撮影も難なくこなす。

このP社から最近、カメラのホットシューに外付けして使うGPSモジュールが発売された。

このGPSモジュール、撮影した緯度経度を記録してくれるので、どこでその写真をとったのかPC上で簡単に確認できるわけだけれど、もっとすごいのが天体追尾システムを搭載していることだ。


P社のカメラはセンサーを微妙に動かすことで手ぶれ補正を行うシステムを採用しているが、GPS機能とこのセンサーを動かす機能を組み合わせて、時間とともに動いていく星を追尾して撮影することが可能になった。


普通は星撮りというと、かなり高価な機械を買わないときれいな写真はとれないのだけれど、このGPSモジュールを使うと誰でも簡単に天の川が撮れてしまうという。

そんなわけで、今回はこのGPSモジュールを導入して早速愛機に付けて試してみた。
最大300秒の追尾が出来るので、一回の露光でかなりの数の星が写ってくる。

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カミホロ避難小屋でテントから顔だけ出して、地面にカメラをじか置きして頭上の天の川を撮ってみる。超広角レンズなので四隅が流れているけれど、結構撮れている。
P社K-5 + S社 8-16mm ISO400 f4.3 240秒

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同じカミホロ避難小屋から北側、十勝岳の上のカシオペア座付近。カシオペアの右下に流星。そのまた右にアンドロメダ銀河が写っていた。自分のカメラでアンドロメダが撮れるとは思っていなかったのでびっくり。
P社 K-5 +P社 DA*16-50mm ISO400 f2.8 120秒


モジュール導入前の星の写真はこんな感じの一枚取り。

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↑雷鳥沢野営場からのオリオンと立山

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↑爺が岳・種池テント場からのオリオン

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↑カシオペアと槍ヶ岳穂先

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↑北斗七星と槍ヶ岳山荘



新しい機能でこんな写真の星ももっと綺麗に撮れるようになるかな、と期待している。
P社のカメラを使っている人々の間ではこのモジュールは大人気になっており、入手しにくくなっているとのこと。

残念ながら愛機は2度目の落下時にレンズ交換ボタンが飛んでいってしまい入院中ですが・・・。
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縦走余話(4) 水

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↑大雪山・裏旭の雪渓から流れ出る雪解け水。


残雪の多い今年の大雪山系は7月末の時点ではまだ雪渓も多く残り、水にはさほど困らなかった。

雪の少ない年は水の確保が大変で、特に美瑛富士からトムラウシにかけての区間は水場が涸れると、双子池あたりで汚いたまり水を飲む羽目になることもあると聞いていた。

そういうわけで、初日に飲み水は6リットルちょっとを持って稜線まで上がったけれど、その水は2日目の夜には無くなってしまって、途中で汲んできた雪渓融雪水を使い始めていた。

担ぎ上げた水が無くなった後は、雪渓を横切るたびに水を汲むわけだけれど、水場はあちらこちらにあると言うわけではない。登山道近くの残雪なんて毎年決まったところにしか無いし、雪が少ない年は雪渓が無かったりして注意が必要になる。


結局その後の縦走中に、12リットルほどの水を雪渓から補給した。


ところで、北海道の生水はエキノコックス感染の危険があるので煮沸しないと飲用できない。
北海道感染症情報センターの統計によると、エキノコックスの新規患者は次のようである。

年 07 08 09 10 11
道内 22 21 25 16 9
道外 3 2 2 2 2

道外でも毎年かならず2~3人が発症していて、感染源がわからないことも多いものの、明らかに道内での旅行中に感染したと思われるケースも判明している。有効な治療法がなく最終的には死に至ることもあるエキノコックス症の予防は極めて重要。

登山用品店でも売っている「スーバーデリオス」というフィルターを持って行き、融雪水をフィルターをかけてから煮沸するという、2重の安全策を施した。

「スーバーデリオス」のフィルターは0.1ミクロン、エキノコックスの虫卵は35ミクロン、比較的大きな河川で下痢の原因になる原虫(クリプトスポリジウムやジアルジア)の大きさも8ミクロンくらいだから、メーカーの宣伝するデータからはその性能は十分。フィルターで濾過しただけでそのまま飲んでも大丈夫そうではある。



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↑トムラウシ南沼の指定地と右手の雪渓(水源)

とあるサイトの比較表

性能が変わらないのであれば、軽くて安いのがいい、ということでこれを持って行ったのだが、忠別岳ですれ違った方はあまりいい評価はしていなかった。フィルターがすぐ詰まって・・・という理由であった。

確かに説明書に書かれた数百回という濾過をこなす以前に、自分の経験でも20回程度の使用でかなり目詰まりしてきて相当の圧力が必要になっている。でもそれはフィルターがちゃんと働いているということの裏返しなのかも知れない。今のところその実力には半信半疑というところ。


いずれにしても、毎日汲んできた水を濾過・煮沸して自作の「大雪の雪解け水」をペットボトルに詰めて歩く。
見た目がきれいな小沢に行き当たったときなどは、その沢水を思い切り飲んでいるつもりで、ペットボトルの水を必ず一口飲むのだった。そしてまたそれがとても美味しいのだ。


でも正直に言ってしまうと、トムラウシから白雲岳へ20kmを超える長い距離を歩いてようやく小屋が目前に迫ったとき、大きな雪渓からドードーと噴き出す水を目の当たりにしてもう我慢できず、思わずそのまま濾過もせずにゴクリゴクリと2~3口、思いっきり飲んでしまった。

雪渓から直接出ていたのでエキノコックスの虫卵が含まれる可能性は相当低いと思ってのことであったが、さて・・・結果が出るのは何年も先の話か。
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縦走余話(3) ヒグマ対策

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さすがに鈴をつけていない登山者は見なかったけれど、ヒグマ対策は絶対に必要だろうと思う。

1970年の福岡大パーティーの3人死亡事故はあまりにも有名ではあるけれど、それから何年経とうとヒグマの気質が急に変わるとは思えない。

北大の先生の著書によれば、大抵のヒグマはヒトを避けるけれど、最初からやる気でヒトを襲ってくる性悪なヒグマの存在する確率は2000頭に1頭とのこと。その性悪な1頭がカムエクのような事故を起こすのだという。

今でも道内でヒグマによる死亡事故が毎年のように発生していることを考えても、大雪山系の最深部を1人で歩くのに何も用意をしないというわけにはいかなかった。


鈴は当然ながら、ラジオ、ホイッスルといった鳴り物を持ち、カプサイシンのスプレーも、いつでも使えるように腰につけて行った。相手がこちらに気付かないうちに接近してバッティングしないよう、藪道では大きな声を出しながら歩く。


何よりも「鉈」は必携だとその先生は言う。
「運悪く性悪なヒグマに遭遇して相手がやる気満々で向かってきたら、こちらも覚悟を決めて戦う以外に助かる方法は無い」のだそうだ。

丸腰ではまず助かる可能性は低く、「鉈」などの武器が絶対に必要とのことであった。


鉈なんて持って歩いたら下手すると銃刀法違反になってしまうけれど、自分も命が惜しいので鞘ごと新聞紙にくるんだ鉈をザックの横ポケットに差し込んでいつでも取り出せるように持っていた。

そして、鞘の留め金を外してスタンバイ状態にしたのはたった一度、オプタテシケ山の中腹でビバークをした時だけであった。


道中すれ違った登山者の中で、ここまでの小心者はパッと見た感じではいないようではあったけれど、どこまで対策するかというのは完全に個々の考え方次第かな、と思う。

sくま
忠別岳で、大きな岩の手前でヒグマが斜面を登っているのを目撃。左側に頭が突き出ている。
写真ではわかりにくいけれど、相当な大きさ。こちらの大声に気付いてくれて、尾根の向こうに姿を消した。

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目算ではその距離6-700mと思っていたけれど、後で正確に測ると500m程度だった。時速40kmで山を走り回れるヒグマが本気で走ったら1分もかからない。

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一番左が北大の先生の著書。
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縦走余話(2) カミホロの夕日

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縦走中一番天気が良かったのが初日のカミホロ避難小屋。十勝連峰の稜線から眺める夕日は素晴らしかった。

夕食を終えて19時前、小屋からもテントサイトからも人々が稜線に上がって沈む夕日を思い思いに眺めている。
若者達も元気一杯、男女7人夏・・・みたいに仲良さそうでうらやましい。


少し離れたところで、カラフルなタイツを履いた女の子を岩の上に立たせ、夕暮れの空を背景にシルエットを撮影している中年の男がいた。何枚も何枚もしつこく撮っているところをみると、何かファッション誌の撮影で来ているかの様。

カミホロカメットク山との鞍部から自分も数枚景色を撮って、ぼーっと富良野盆地の雲海を眺めていたのだけれど、その男、「じゃあ今度はカミホロをバックに撮ろう」と言ってこちらを振り向くや、「あ~ちょっと、そこどけてくれませんかあ?」と手で払い除ける動作をしつつ、移動を要求したのだった。


もう引き上げようと思っていたところだったので「ハイハイ」と譲ってあげたけれど、シッシッという感じの手の動きがちょっと非常識な気がした。普通は自分たちが移動して絵の中に他人が入らないようにするものだろう。

山の上も下界と同じ、色々な人がいるのだ。
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縦走余話(1) 車の回収

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7/23 入山口は十勝岳温泉・凌雲閣前。

今回の山旅、ルートは早々と決まっていたものの、どちらから入山してどちらに下山するかということがもっとも難しい部分だった。これは北海道に上陸しても最後まで決められなかったほど悩ましい問題だった。

山に入ってしまえば北向きでも南向きでもさして変わらない。
強いて言えばオプタテシケ山を越えるのに、北から来ると600mの登りで、南から行くと300mで済む、というくらいのもので、それにしたって大した問題ではない。


むしろ下山後に車の回収をどうすれば安く楽に済ますことが出来るか、ということだった。


十勝岳温泉も旭岳温泉も、バスはそれぞれ上富良野と旭川から1日に3本だけで、間をつなぐJRの時間も限られている。バスを使おうとすれば、かなり緻密な計画を立てないとうまく乗り継ぐことが難しい。

自転車も積んで行って用意はしていた。
たとえば、旭岳温泉に自転車をデポしておいて、下山後にその自転車を使って北美瑛まで走り、北美瑛に自転車をまたデポして、JRとバスを使って十勝岳に戻るということも検討していた。

しかし現地に着いてみるともう昼前で、自転車をデポしている時間がもったいなくて、そのまま登りはじめることになったのだった。


そうして、旭岳温泉に下山してからは次のようにして十勝岳温泉に戻ることになった。
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14:10 旭川電気軌道バス「いで湯号」で旭川空港へ 920円
15:00 旭川空港からタクシーにて富良野線の千代ヶ岡駅へ 1410円
15:40 JR富良野線、千代ヶ岡から上富良野駅まで直通 520円
16:40 上富良野駅からバスにて十勝岳温泉へ 500円
17:15 十勝岳温泉着・泊

「いで湯号」で終点の旭川駅まで行ってしまうと、そのあとのJR富良野線と上富良野のバスへの乗り継ぎがうまくいかないので、途中、旭川空港でタクシーに乗り換えてショートカット。
3時間、3千円ちょっとで旭岳温泉から十勝岳温泉に戻れたのはまずまずだと思う。
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